その日は、1日出張で館山へ。
車の中で、ひんやりとした潮の香りとした風を感じていた。
「お昼休みも外に出られそうもないし、どこかコンビニに寄って昼食の調達をしなくちゃ。」
コンビニを探していたら、小さな行列を見つけた。
その先にあったのが、館山中村屋だった。地元では「なかぱん」として親しまれているそう。
◆レトロな扉の先に、なかぱんのあたたかな香り
なかぱんの外観は、どこか懐かしい。
大正時代から続く老舗と聞いて、なるほどと納得する風格。
扉を開けた瞬間、ふわりと広がる甘く香ばしい香り。
パン屋さんの香りって、どうしてこんなにも心をほどいてくれるんだろう。
ショーケースの中には、素朴で誠実そうなパンやケーキがずらり。
見栄えよりも「中身」で勝負、そんな声が聞こえてきそうだった。
◆なかぱんひとつ、またひとつ。選ぶたびにワクワク
まず目に留まったのは、あげパン。
昔、給食にあげパンが出ると嬉しかったっけ。。食べてみるとあの頃と何も味が変わっていない。
なつかしさで、あげパンを嬉しそうに食べる小学生の自分に戻った気分になる。
そして、メープルマウンテン。
「これは…焼いてバター塗ったら絶対美味しいやつ」
噛むと、メープルのほんのりとした甘さがやさしく広がって、思わず目を閉じた。パンというよりはケーキに近い、バターとの相性もぴったり。
そして、チーズ食パンにつぶあん食パン。
袋越しに伝わるずっしり感。中を見れば、これでもかというくらいのチーズと餡。噛むほどに、じんわりと甘みがにじみ出る。
◆2階の喫茶室で、なかぱん時間がゆっくり流れ出す
時間が迫る中、せっかくなので2階の喫茶室へ。
階段を上がると、そこには昭和がふんわり残る空間。
ミックスサンドやプリンアラモードが似合う、懐かしい空気。昔デパートの中にあったレトロな喫茶店・・・!クリームソーダが流行っていたっけ。
ここで買ったパンと一緒に頼んだコーヒーをすすりながら、窓の外の風景をぼんやり眺めながら思い出に浸れたら、どんなに幸せだろう・・。
これこそが何もしない、なかぱんの「贅沢なひととき」。
◆なかパンは、記憶を呼び覚ます
お昼休みに、朝買った中村屋のパンを食べた。不思議と心の奥にある「懐かしい記憶」がふっと浮かんでくる。
それは、母が作ってくれたおやつの時間だったり、塾帰りに友達と買ったパンだったり。
流行に左右されない、地に足のついた味。
きっと、館山の人たちはこのパンと一緒に育ってきたんだろうな。
◆旅の余韻と、なかパンのぬくもり
帰る途中、気がついたらもう一度お店に立ち寄っていた。
「やっぱり王道の食パンを買って、家で食べたい!」と思ってしまった。
家に帰ってから、食パンを軽くトーストし、ピーナツクリームを塗って食べた。
予想通りの、いや、予想以上の美味しさ。
「また行こう」そう心の中でつぶやいた。
なかパンは、旅の思い出になった。
いや、きっとこれからも、ふと恋しくなる味になる。
館山を訪れた際には、ぜひ、なかぱんにお立ちよりください!
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